Google「Expert Intelligence」とは?購入した本をGemini Notebookで使える新機能
2026年8月27日、Googleは「Expert Intelligence」を発表しました。Google Play Booksで購入した対象の電子書籍を、Gemini Notebook(旧NotebookLM)へ直接追加できる取り組みです。
追加した本について質問すると、Gemini Notebookは本の内容を根拠に回答し、該当箇所への引用を示します。自分のメモや仕事の資料と組み合わせたり、クイズ・音声解説・インフォグラフィックへ変換したりすることもできます。
Expert Intelligenceという名称だけでは、何が変わるのか少し分かりにくいかもしれません。重要なのは、AIが学習時に得た知識へ頼るのではなく、読者が購入した本そのものを参照し、回答の根拠として使えるようになったことです。
この記事では、何ができるのか、従来のGemini Notebookと何が違うのか、そして現時点の対象条件や注意点を整理します。
先に結論:購入した本をAIの参照元として使える
| 項目 | 2026年8月31日時点で分かっていること |
|---|---|
| Expert Intelligence | 信頼できるコンテンツをGoogleのAI製品で活用する、Google横断の取り組み |
| 最初に使える場所 | Gemini Notebook |
| 現在追加できるもの | Google Play Booksで購入した対象の英語電子書籍 |
| 対象書籍 | 開始時点で10万冊以上。出版社・言語・形式によって対象外の本もある |
| 今後の予定 | Geminiアプリ、Google検索のAI Mode、第三者の購読コンテンツ、調査レポート、教科書などへ拡大予定 |
Expert Intelligenceの最初の提供形態は、Google Play Booksで購入した対象書籍を、Gemini Notebookのソースとして直接追加できる機能です。
画期的なのは、AIに本の内容を思い出させるのではなく、出版社が利用を認め、読者が実際に購入した本を、そのまま回答の参照元にできる点です。回答には本の該当箇所が引用されるため、AIの説明だけで終わらず、元の文章へ戻って確かめられます。
Googleは、Bloomsbury、Macmillan、O’Reilly Media、Penguin Random Houseなどの出版社と協力し、10万冊以上から提供を始めました。ただし、Google Play Booksにあるすべての本が対象になるわけではありません。
購入した本を「読む」から「相談する」へ変えられる
電子書籍をGemini Notebookへ追加すると、単に全体を短く要約するだけではなく、次のような使い方ができます。
- 特定のテーマについて、著者がどのように説明しているか質問する
- 回答の引用元を開き、本の該当箇所と文脈を確認する
- 本の内容からクイズ・学習ガイド・音声解説・マインドマップなどを作る
- 複数の対象書籍を一つのノートブックで比較する
- 自分のメモや資料を加え、書籍の考え方を具体的な課題へ当てはめる
Gemini Notebookは、登録したソースを根拠に回答するグラウンディングを得意とするサービスです。Expert Intelligenceによって、そのソースに出版社が許可した市販の電子書籍を加えられるようになりました。
Googleの公式発表では、マネージャーが組織運営の本と実際の職場の悩みを組み合わせる例や、冷蔵庫の写真と食生活の本から献立を考える例が紹介されています。つまり、著者の一般的な助言を読むだけでなく、「自分の場合はどう当てはめるか」を考える補助に使う設計です。
使い方:Play Booksから対象書籍を追加する
- Gemini Notebookを開き、Google Play Booksと同じGoogleアカウントでログインする
- 新しいノートブックを作るか、既存のノートブックを開く
- 「ソースを追加」から「Play Books」を選ぶ
- 購入済みの対象書籍を選び、ソースとして追加する
対象外の書籍も一覧には表示されますが、グレーアウトして選べません。Google Play Booksの商品詳細でページ数付近の「Tools」バッジを開き、「Gemini Notebook」が表示される本も対象です。購入済みの本では「Use with Gemini Notebook」ボタンの有無からも確認できます。
まずは本を買う前に、対象表示があるか確認するのが安全です。対象冊数は今後変わるため、「この出版社ならすべて使える」とは考えないほうがよいでしょう。
従来のファイル追加との違いは、購入権と出版社の許可
Gemini Notebookには以前から、PDF・EPUB・Webページ・Googleドキュメントなどを自分で追加する機能があります。そのため、「電子書籍なら、これまでもアップロードできたのでは」と感じる人もいるでしょう。
Expert Intelligenceの違いは、購入済みの対象書籍をGoogle Play Booksから正規のソースとして追加できることです。DRMで保護された本を自分でファイル化したり、文章を大量にコピーしたりする必要がありません。出版社が対象書籍を有効にし、Googleアカウントの購入権を確認したうえで利用できます。
一方、自分でGoogle Play BooksのライブラリへアップロードしたPDF・EPUBは、Play Booksソースとしては利用できません。権利を持つファイルをGemini Notebookへ直接アップロードする方法とは別の仕組みです。
共有しても、本の購入権までは共有されない
著作権者と出版社への配慮が分かりやすく表れているのが、共有ノートブックの扱いです。
対象書籍を含むノートブックをほかの人へ共有しても、相手がその本を自由に読んだり質問したりできるわけではありません。共同編集者も自分のGoogle Play Booksアカウントで同じ本を購入する必要があり、購入していない場合はノートブック内でその本を利用できません。
これは少し不便ですが、一人の購入で電子書籍の内容がチーム全体へ広がる仕組みではないことを明確にしています。Expert Intelligenceが単なるファイル共有ではなく、購入権と結びついた仕組みであることが分かります。
仕事や学習では「本と自分の資料を組み合わせる」と価値が出る
一冊の本を要約するだけなら、従来の読書メモでもできます。Expert Intelligenceが特に便利になりそうなのは、専門書と手元の情報を一つのノートブックへ入れる使い方です。
| 利用場面 | 組み合わせるソース | 質問の例 |
|---|---|---|
| マネジメント | 組織運営の本+会議メモ | この問題を著者の考え方に沿って整理すると、最初に何を確認すべきか |
| 技術学習 | 技術書+自分の設計資料 | この設計で、本の原則から外れている箇所と理由を引用付きで示して |
| 資格・授業 | 参考書+講義ノート | 講義で扱った範囲から復習クイズを作り、誤答の理由も説明して |
| 企画 | マーケティング本+顧客アンケート | 本のフレームワークを使って、回答を分類すると何が見えるか |
以前の記事「NotebookLMがGemini Notebookへ。名前だけではない変更点と『第二の脳』としての進化」で紹介したように、Gemini Notebookは保存した資料を読むだけの場所から、資料を使って考える作業環境へ広がっています。Expert Intelligenceは、そこへ市販の専門書を加える機能だと捉えると分かりやすいでしょう。
現時点で注意したい5つの制限
- 対象は一部の英語電子書籍:Googleの公式ヘルプは、現時点の対象を一部の英語電子書籍としています。日本語書籍が使えるとは案内されていません。
- Google Play Booksでの購入が必要:紙の本、Kindleなど別ストアの電子書籍を持っていても、その購入権は引き継がれません。
- 同じ出版社でも対象外がある:出版社の許可、言語、書籍の形式などによって利用可否が変わります。
- 共有相手も購入が必要:ノートブックの共有だけで、書籍の利用権を渡すことはできません。
- AIの解釈は確認が必要:本を根拠に回答しても、質問の意図や文脈を取り違える可能性はあります。重要な判断では引用元を開き、前後の文章まで確認してください。
また、自分の仕事の資料・日記・写真などを組み合わせる場合は、内容に個人情報や機密情報が含まれていないかを確認する必要があります。本の内容が信頼できることと、自分が追加する情報を安全に扱えることは別の問題です。
AIじてんの見解:価値は「専門家らしい口調」ではなく、根拠への正規アクセス
生成AIへ「専門家として答えて」と指示すれば、専門家らしい文章を返すことは以前からできました。しかし、口調が専門的でも、回答の根拠が実際の専門書にあるとは限りません。
Expert Intelligenceの価値は、AIを専門家のように見せることではなく、購入した本という確認可能な根拠へ、出版社の許可と購入権を保ったままアクセスできることにあります。著者の考え方を勝手に学習したモデルとして再現するのではなく、読者が所有する本をソースとして参照する形です。
この仕組みが広がれば、AIの便利さと、著者・出版社がコンテンツを販売する仕組みを両立しやすくなる可能性があります。将来、購読中の専門誌や業務用レポート、教科書まで同じ考え方で使えるようになれば、AIは「何でも知っているように答える道具」から、「自分が正規にアクセスできる資料を横断して考える道具」へ近づきます。
ただし、Expert Intelligenceという名前が示すほど、AIそのものが専門家になったわけではありません。引用を確認し、著者の主張とAIの提案を分け、最終判断は人が行う。この基本は変わりません。
まとめ
- Expert Intelligenceは、信頼できるコンテンツをGoogleのAI製品で活用する横断的な取り組み
- 最初の機能として、Google Play Booksで購入した対象書籍をGemini Notebookへ追加できる
- 書籍への質問、引用確認、クイズ・音声解説・インフォグラフィックなどの生成ができる
- 自分のメモや仕事の資料と専門書を組み合わせると、具体的な課題へ応用しやすい
- 現時点の対象は一部の英語電子書籍で、紙の本や別ストアの購入権は引き継がれない
- 共有相手も同じ本の購入が必要で、AIの回答は引用元まで確認する
すでにGoogle Play Booksで英語の専門書を購入している人は、まずGemini Notebookの「ソースを追加」からPlay Booksを開き、対象書籍が表示されるか確認してみてください。これから本を買う場合は、商品ページに「Tools」バッジや「Use with Gemini Notebook」があるかを先に見るのがおすすめです。
参考情報(2026年8月31日確認)
- Google:Expert Intelligence: a new way for you to engage with trusted content
- Google Play ヘルプ:Expert Intelligence
- Gemini Notebook ヘルプ:ソースを追加・検索する
対象書籍・対応言語・利用できる製品は今後変更される可能性があります。この記事はGoogleの公式発表と公式ヘルプをもとに、2026年8月31日時点で確認できた内容を整理したものです。